オフィスH  誠信の交わり

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小泉内閣の規制緩和の方針を受けて、コンテンツ資金調達手法の多様化が進む。中でも、コンテンツのファンド設立、信託運用は、一般投資家などからの外部資金流入の最有力策として期待される。コンテンツ信託の扉を開いた官民協働の経緯と先駆者JDC信託の実績を振り返る。

<コンテンツ大国のための資金調達の多様化>
コンテンツの資金調達は、小泉内閣の国家戦略「コンテンツ大国」実現の要だ。その道筋は、経済産業省がつける。98年通商産業省(当時)のマルチメディアコンテンツ流通研究会は、2年間の検討を経て、コンテンツ産業の育成には資金調達をオープンにすべきとし、資金供給や流通環境の未整備、著作権の権利関係の曖昧さを解決する会社設立を提言した。研究会メンバーであり、日本長期信用銀行(当時)出身の土井宏文氏らは、ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC、当時)を設立し、コンテンツ制作者に対するビジネスアレンジメント業務、投資業務、著作権管理業務を開始した。
JDCは設立間もない98年から、アイデアはあるが資金力のない中小規模の制作会社が 著作権を保持し適正な収益分配を受けられるプロジェクト・ファイナンスとして、「東京マルチメディアファンド」(TMF)を3回運用してきた。TMF1は民法上の任意組合として7億円を7年間で39件に投資した(プロジェクト予算の75%、上限金額7,000万円)。出資者は、JDC設立に出資したトヨタ、ビクター、NTTデータの3社と2つの商社(伊藤忠、丸紅)で、浜尾知樹 信託運用部営業統括担当部長(取材当時)によると、「個別に見れば、非常に良いパフォーマンスもあれば、投資額に達しなかった案件もあるが、出資者は満足している」。02年からTMF2(8億円)、05年からTMF3(10億円)を有限責任組合の匿名組合契約に基づき行う。TMF3には中小企業基板整備機構から5億円が投ぜられた。この間、JDCは400件近い案件を審査している。
一方でJDCは経産省の研究会や協議会などに集った企業らと共に、時間や経費の掛かる組合組成ではなく、一般投資家を呼び込む直接金融手法の資金調達、すなわち知的財産の信託受益権化と流動化を訴えた。経産省は04年5月に経済財政諮問会議の要請でまとめた「新産業創造戦略」で、制作者は寡占的な流通部門に制作資金調達、マーケティング等を依存しており、コンテンツが生む付加価値の多くを流通事業者が取得する構造を改善するべきとした。産業界でも、日本経団連が03年8月にエンターテイメント・コンテンツ産業部会(部会長:依田ギャガ・コミュニケーションズ会長)を発足させ、政策要望を積極的に発するようになる。コンテンツ産業は、04年には四輪自動車に迫る国内市場規模13兆円超、世界的に見れば124兆円(02年、デジタルコンテンツ協会編『デジタルコンテンツ白書2005』)となり、世界GDP成長率よりも高い年率6.5%(06年予想、デジタルコンテンツ協会)の成長が見込まれ、「日本経済の将来の発展を支える戦略分野」として官民の思惑が一致した。JDCはその渦中で、コンテンツ信託推進の旗を振った。


<コンテンツ信託へ開かれた扉>
04年12月の信託業法改正で信託業務への一般事業会社参入が認められ、JDCは昨年5月に一般事業会社として戦後初の信託免許を取得し、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託へ社名変更して、念願の知的財産権の信託業務を開始した。
知的財産を信託にするメリットは、投資家リスクを回避できるので、外部資金が流入しやすくなること。信託は、信託財産の所有権等権利の帰属(信託会社に帰属)と経済的利益の帰属(投資家に帰属)を分け、財産管理機能、転換機能、倒産隔離機能により投資家のリスクを低減する(図)。現在の信託法では知的財産権を小口化・有価証券化などの流動化ができない。JDC信託は今後の法改正により受託信託権を流動化できれば、活況を呈するREIT(不動産投資信託証券)のようなセカンダリーマーケット、すなわち知的財産の信託受益権や有価証券などを金融商品として投資家間で売買できる市場が形成されると予想する。このような直接金融市場を通して制作会社が資金を自立的に調達できれば、流通事業者への依存度が下がり、発言権を増し、創造的活動に対する適正な収益分配が得られる、“正の循環”の確立が期待される。


映像新聞 2006年2月13日付け
連載 コンテンツファイナンスの現状と課題(2)
「証券化で投資リスクを分散」
http://www.eizoshimbun.com/

なお記事には、図「コンテンツ資金調達手法の分類」が掲載されています。

新聞に掲載された本原稿は、きっちり校正され、もっと読みやすいです。
「もっと読みやすいの」をご希望の方は、新聞をご購入ください、ね。

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http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp/39507086.html

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