オフィスH  誠信の交わり

オフィスH(オフィスアッシュ)のブログです。世界から、豊かな物語を紡ぐ個性的なアニメーション映画や独立系作家に役立つ情報を紹介します。

東京国際映画祭のマーケットTIFFCOM 2006で、日本にはない映像専門家養成校を知りました。
AFIコンサバトリーといいます。
AFI(American Film Institute、アメリカ映画協会)の人材養成部門です。
映画・テレビ人養成では全米トップ5の一つに数えられるとか。
近年だけでも「ラストサムライ」の監督エドワード・ズウィック、「マイノリティ・リポート」の脚本家スコット・フランク、「サウスパーク」のプロデューサー アン・ガレフィーノなどを輩出。
開校以来3000人以上を養成した実績を誇ります。
その多くは、independent(独立系)として活躍しています。

フィクション専門のプロ養成機関として1969年に開校したAFIコンサーバトリーは、日本の専門職大学院に近いものです。
しかし実態は異なります。
監督(Directing)、カメラマン/撮影監督(Cinematography)、脚本(Screenwriting)、プロデューサー(Producing)、編集(Editing)、プロダクションデザイン(Production Design)の6学科があります。
終了すると、Master of Fine Artsの学位が取得できます。
定員は少なく、学科毎で28名しか採用しないそうです。(編集とプロダクションデザインは、各14名のみ)
つまり、狭き門を抜けたエリートたちの修養の場。

コースは2年間で、そのほとんどが制作実習(ハンズオン・トレーニング)。
学生は、学科混合チームを作り、実習制作に励みます。
課題は、1学年目に3本の短編、2学年目に30分以内の卒業制作1本。
制作の途中で、指導教官のアドバイスを受けます。
卒業制作(thesis)になると、40回もアドバイスを受けることがあるそうです。
技術的なアドバイスも、教官や外部のプロから受けることができます。
なにしろ、第一級の技術者や作家が卒業生リストに名を連ねているのですから。
現場の制作態勢に近い状態で、学生が自主的に制作をするといった感じ。
入学希望者には実務経験者が多いそうです。
それでも年齢制限はないため、40代になって「映画を作りたい」学生もいたそうです。

学費は高額です。
年間3万ドル(約350万円)x 2年間=約700万円となります。
学生の多くは奨学金を受けるか、学資ローンを組んで、勉強しています。
留学生も多く、1/3くらいになります。
日本からは多くないようです。過去16年間に18人くらい…1年に1名程度ですね。
なんと、ギャガの依田会長が奨学金を提供しているそうです(ポケットマネーからかどうかは知りません)。

学生作品とは言え、内外の評価は高く、映画祭での受賞も数限りないとか。
著作権はAFIが保有し、AFIは作品の権利管理をしています。
世界配給もおこなっています。
利益配分も決まっていて、
  50%… 実演家(プロの俳優を使うため、組合で決まった料率)
  25%… 学生の作家
  25%… AFI
このような態勢ですから、学校が率先して作品を映画祭等に送り出し、外部評価を高める努力をしています。
学生も、その努力を裏切らないような制作活動をしているのです。

来日したジョー・ペトリッカ副学部長に聞いてみました。
日本では、日本では実習なしでプロデューサー養成をする学校があるのですが…
「制作実習(ハンズオン・トレーニング)重視の実務教育がプロを育てる。それをしないのは、現役プロデューサーの再教育ならあり得るだろうが、経験の乏しい学生に効果があるのか疑問だ」と答えました。

同じ教育費を使うなら、プロに近づける実践的な場所=制作の場がいいようですね。

http://www.afi.com

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