オフィスH  誠信の交わり

オフィスH(オフィスアッシュ)のブログです。世界から、豊かな物語を紡ぐ個性的なアニメーション映画や独立系作家に役立つ情報を紹介します。

海外情報にアンテナを張っている方はご存じでしょうが、欧米で長編アニメーション映画が元気、ですね。
地域により傾向は異なりますが、ファミリー向け作品だけでなく、おとな向けの作品も元気です。
たとえば、今年のオスカー候補にもなった、フランスの『ペルセポリス』とか。興行的にも成功しています。

4月8日には、ディズニーとピクサーが共同記者会見をニューヨークでおこない、2012年までに10本の長編をリリースすると発表しました。
劇場公開では、夏シーズンにピクサー作品、クリスマスシーズンにディズニー作品を公開。
ダイレクトDVDでも毎年発売予定。
特に、3D作品が増えるようです。ピクサーが09年に初の3D作品『Up』を予定するほか、ディズニーの公開作品はほぼ3D版です。『トイ・ストーリー』シリーズも3Dにリメークされるそうです。
(映像新聞 4月21日号掲載)

映画祭でも、長編部門が強化されています。
アヌシー・フェスティバルしかり、5月1日から始まるシュトゥットガルト・アニメーション・フェスティバルもそのようです。

欧州でも、今後数年間に渡り長編アニメーションの制作、公開予定が目白押し。
劇場も長編アニメーションを求めていると伝えられます。
まだ飽和状態ではないらしく、製作資金もそれなりの金額が集まっている模様です。
そもそも欧州では、1国資金で長編を作ろうという発想でなく、複数国にまたがる資金調達であり、公開計画が前提ですから、仮にどこかが不調になっても、即下火ということにならないのかも知れないですね。

作品としては、冒頭にも書いたとおり、ファミリー向けだけでなく、広い世代を対象とする映画にアニメーションという手法が取り入れられています。
それは伝統的にアニメーションが強い国だけでなく、欧州全体に及びつつあります。
そして手描き、立体、そしてCG、技法もさまざまです。
”アニメーション大国”と自負する日本が、TVシリーズ/マンガ原作の長編の一部に勢いがありますが、それ以外は・・・という状況が不思議なくらい、世界は面白いですね。

面白いついでに、もう1つ。短編から長編という流れもありますね。
ピクサーが11年に公開を予定する『Newt』は、オスカー音響賞を受賞した音楽監督ゲーリー・ランドストロムさんの初監督作品。
実は、ランドストロムさんは『Lifted』という3DCGの短編を作っています。短編から長編へ、ですね。

もちろん、短編と長編は別物とも言えます。短編作品しか創らない作家もいます。
その一方で、長編を目指す若き作家が経験を積むステージとしての短編もあるのですね。
欧州の映画祭は「短編部門」も元気です。そこから、新しい才能が出てくる。映画祭に集うプロが、その才能を見逃さず、チャンスを与える。そんな循環で、人材のすそ野が広がっているのでしょうね。
欧州では、さまざまなスタイルで、官民共同しながら短編作品を応援しています。
公的資金や支援も工夫されている。民間も、たとえばTV局が支援をする時も、実は公の役割が働いていたりする。
そうやって”人”が育ち、産業が広がる・・・そんな現場が、今の欧州の長編アニメーションの勢いのように感じます。