オフィスH  誠信の交わり

オフィスH(オフィスアッシュ)のブログです。世界から、豊かな物語を紡ぐ個性的なアニメーション映画や独立系作家に役立つ情報を紹介します。

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北欧とカナダ作品26本の特集上映「海外アートアニメーション@トリウッド 2008秋」は9月13日からスタートします。
それに先立ち、試写会をおこないました。

クレイと手描きを組み合わせた「渾身の自画像」(「A Self-portrait」、掲載画像(c)LR Film Productions)の作家、クリスティアン・リンドブラード監督がフィンランドから駆けつけてくれました。
オフィスHがトリウッドでおこなう海外ものの興行では、14回目にして、初の監督出演。嬉しいです!!!

クリスティアンさんの作品、トーリル・コーヴェ監督「デンマークの詩人」など6本を紹介しました。
お客さまも、個性ある作品を楽しんでくださったようようです。

上映後、クリスティアンさんがフィンランドのアニメーションについてお話をしてくれました。
俳優や映画監督など、いろいろな人生経験を積んできたクリスティアンさん、とっても良い奴!といった感じでした。

そのノート(日本語、英語)を掲載します。
フィンランドでアニメーションが盛り上がっている状況が見えてきます。

その前に、ちょっと宣伝を・・・
海外アートアニメーション@トリウッド 2008秋 予告編はこちらでご覧になれます。

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では、クリスティアン・リンドブラード監督の講演ノートです。
(文字化けを避けるため、アクセント記号は省略しています)

<< フィンランドのアニメーションについて >>

映画芸術が発展した20世紀初頭、農業国フィンランドの“映画産業”は発達が遅れ、小規模でした。アニメーションはアメリカで大いに成長し、ヨーロッパでも発展しました。しかし、フィンランドのアニメーションは第二次世界大戦後までは初期段階で、広告・コマーシャルなどに使われる程度でした。

フィンランドの初期のアニメーターたちは、グラフィックデザインやビジュアルアート出身で、アニメーション監督として生きるということではありませんでした。70年代の終わりに、わが国初の長編アニメーション映画「The Seven Brothers」(7人の兄弟、1979年)が、Riitta Nelimarkka(リーッタ・ネリマルッカ)とJaakko Seeck(ヤーッコ・セーク)によって制作されました。この切り絵のアニメーションは、残念ながら大衆の目に触れることはありませんでした。さらに記すべきパイオニアは、アニメーターであり、70年代初頭にキャリアをスタートさせた“発明者”のJan-Eric Nystrom(ヤンエーリック・ニューストレム)です。ニューストレムは、ディズニースタジオで働いたこともあり、今でもコマーシャル、ビジュアルエフェクトあるいは短編を創り続けています。彼の作風は手描きのハードボイルドタッチです。(ニューストレムのHP、 ANI-MATO!

15年前、エストニアのアニメーション監督Priit Parn (プリート・ピャルン)の指揮の下、Turku Arts Academy(トゥルク高等専門学校芸術学部)にアニメーション学科が設立されました。これ以降、フィンランドのアニメーションは飛躍的に発展したのです。海外アートアニメーション@トリウッド 2008秋に選ばれた作品の内9本の作家はトゥルクで学んでいたのです。いくつかのスタジオも設立されました。成功例が、3DCGアニメーションスタジオのAnima Vitae(アニマ・ヴィタエ)です。このスタジオでは、長編やテレビシリーズだけでなく、本セレクションにあるLaura Neuvonen(ラウラ・ネウヴォネン)監督の「Mobleeraja」(悪夢の引っ越し)のような短編も制作されています。
今日、フィンランドのアニメーションは、“作家”や“芸術家”だけのものではなく、フィンランドの映画産業の一部となっています。それは、制作に邁進するアニメーター/アニメーション監督たちが、時に芸術的な(artistic)時に商業的(commercial and industrial)な、多岐に渡るアニメーションを創り出す“仕事(labour)”の結実なのです。

海外アートアニメーション@トリウッド 2008秋で上映するアニメーションの大半は、創作活動をルーティンワークにし始めたばかりの若手作家の手になるものです。それらの気の利いた発想は、豊かな才能と確かなアニメーション術に裏付けられた短編作品へ、これから連なっていくことでしょう。
昨秋、フィンランド・フィルム・アーカイブが日本アニメ史の特集上映をおこないました。たいへん興味深い特集では、1920年代から50年代までの日本アニメ集が紹介されました。そして、歴史的名作の「鉄腕アトム」「銀河鉄道999」「AKIRA」、枚挙に暇がないほど、胸躍る特集でした。

広島国際アニメーション・フェスティバル(8月7日~11日)で、フィンランド・アニメーションの大特集が組まれていますが、海外アートアニメーション@トリウッド 2008秋のセレクションは一味違います。これは、わたしたちにとってより重要な特集上映です。つまり、映画祭参加者に見ていただくのとは異なり、映画監督にとってより大切な(一般の)観客に見ていただけるからです。このセレクションは(フィンランド・アニメーションの)将来を見通しており、ここに登場する若手作家たちの作品をご覧になる機会が今後増すことと信じています。では、「カサブランカ」のハンフリー・ボガートの名セリフで締めくくりたいと思います、「I think this is the beginning of a beautiful friendship(これが美しき友情の始まり)」。

2008年8月4日
Christian Lindblad、クリスティアン・リンドブラード
( )内は訳者補足


クリスティアンさん、そして奥さまのパイヴィさん、どうもありがとう!

<お知らせ>
9月の本興行では、スウェーデンから来日してくれる、カンヌ映画祭ノミネート監督 エーリック・ローゼンルンドさんのトークショーもあります。
お楽しみに!!