オフィスH  誠信の交わり

オフィスH(オフィスアッシュ)のブログです。世界から、豊かな物語を紡ぐ個性的なアニメーション映画や独立系作家に役立つ情報を紹介します。

7月22日にノルウェーの首都オスロと近郊のウトヤ島で起きた爆弾テロと銃乱射事件は、世界中に大きな衝撃を与えています。
背後関係は分かりませんが、これが1人ないし少人数で計画、実施された事件だとしたら・・・自動小銃も爆弾も、以前に増して誰でも入手できるようのなりました。
シューティングゲームのように、一人で銃を乱射しながら、”先へ進む”・・・バーチャルの絵空事が、極身近で起こりうる。そういう恐怖を誰でも感じたことでしょう。

ノルウェーの人たちは、”一人の男”が引き起こした事件の悲惨さに衝撃を受け、「必要な行動だった」とするアンネシュ・ブレイビク容疑者の発言に怒りを覚えているようです。
ノルウェー通の友人によると、移民排斥を掲げるグループは容疑者との関わりを否定し、追随するような動きは見られず、「反イスラム主義」という思想がクローズアップされ、もっと良い社会づくりに一致団結していこうという雰囲気が見て取れるそうです。

反イスラムあるいは反移民の感情は、ヨーロッパで大なり小なり燻っています。移民受け入れ政策を批判する政党が人気を得て、世論が右傾化する傾向もあります。
人口の少ないヨーロッパ諸国は、GDPを高めるために、あるいは政治的理由から、移民を受け入れてきました。
そして多文化容認、トランスカルチャーな社会を築こうと努力しています。
それでも、ある程度を越えた割合で、文化や生活習慣が異なる人たちが社会や地域に増えると軋轢が生まれる。
排斥か、より開かれた社会にするのか、とても難しい問題です。

今回のテロが”単独犯”だとしたら、それはそれで恐ろしい。
組織的支援を得ず、孤独に鬱々とため込んだ”怒り”に従い、ある日突然凶行に走る。誰も予想も、防御もできません。
近年、そのような事件が増えているように思えます。
もちろん、社会への不満は昔からあります。誰だって、100%満足な人生は送れない。抑鬱された感情を制御できないのは、現代人だけではない。
それでも、爆弾や自動小銃などの大量殺人可能な武器がネットで手に入る。
あるいは、トラックをレンタルして、群衆に突っ込むこともできる・・・
そこが恐ろしいのです。

ノルウェーの女性アニメーション作家アニータ・キリさんは短編アニメーション映画『Angry Man』で、内なるアングリーマン(怒り虫)を押さえられず、家庭内暴力をする男に対し、こう諭します:
ばらばらの自分を治すのです。
隠れている、長くて暗い階段をおりて、アングリーマンとともだちになりなさい。
そうしなければ、幸せにも、穏やかにもなれない。

「多くの人は、内に“アングリーマン”あるいは“アングリーウーマン”を抱えながら、生きている」。
映画『Angry Man』は特殊な人のお話ではないのです。
誰かに話して、一緒に解決していきましょういうメッセージを、キリ監督は発しています。

アニータ・キリ監督の紹介>>
Daily Yomiuri(デイリー読売)掲載インタビューと本作の社会的背景について>>

■ 『Angry Man』は、『パパ、ママをぶたないで!』という邦題でDVD発売されています>> 発売元 パンドラのサイト

■ 原作絵本(作/グロー・ダーレ 絵/スヴァイン・ニーフース)は邦訳され、「パパと怒り鬼 ―話してごらん、だれかに―」という題名で11年8月に発売されます>> 発売元 ひさかたチャイルドのサイト

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