オフィスH  誠信の交わり

オフィスH(オフィスアッシュ)のブログです。世界から、豊かな物語を紡ぐ個性的なアニメーション映画や独立系作家に役立つ情報を紹介します。

アヌシー2012の速報で、韓国出身のコミックス作家Jung(ユング)が初監督した長編アニメーション映画『Couleur de peau: Miel(仮題:ハチミツ色の肌)』が、長編部門の観客賞とUNICEF賞を受賞したことをお伝えしました。

ユングさんは、朝鮮戦争の動乱が続く韓国で1965年に生まれ、孤児となりました。国際養子として5歳でベルギーに渡り、以後ベルギーの養父母と”兄弟姉妹”と一緒に育ったそうです。国外へ養子縁組された20万人もの子どもの一人として、ユングさんが経た成長、そして40歳を過ぎて訪れた母国・韓国との接点。そして、ベルギーの養母のこと。
当時の記録映像、家族ビデオとアニメーションが上手く融合したドキュメンタリー・アニメーションです。
Couleur de peau: Mielの公式サイト>>
予告編>> 

イメージ 3


ユングさんには、韓国の生母の記憶がないそうです。自分は捨てられたのか・・・きっと理由があって、お母さんは自分を手放したのであろう・・・。

アヌシーで、とても心に残りました。
日本でも、みなさんに見てもらいたいと願っています。
ユングさんにメールを送ったら、丁寧な返事をいただきました。
ベルギーとフランスで始まった一般公開で行っている、子どもと一緒の上映会の写真を送ってくれました。
(上の写真でマイクを握っているのがユングさん)

イメージ 1

イメージ 2

そして、こちらは
ユングさんの17歳のお嬢さんLittle Cometさんがリミックスした、サウンドトラックのビデオパフォーマンス
Clip maison
「Couleur de peau Miel」挿入曲>>
「ハチミツ色の肌」の音楽は心に染みいる、やさしい音色です。そして、「アリラン」も。

ユングさんの体験が子どもたちへ語り継がれているんですね。

もう1本、アヌシーの長編部門コンペにエントリーしていた韓国の『The Dearest』は、アニメーション技術も脚本、演出もまだ未熟ながら、印象に残りました。
韓国の寒村で、知的障害を持つ女性が、父親が分からない子どもを出産し、死んでしまうところから始まり、その女性の幼馴染み(2人の女性と1人の男性) が、子どもを保護し、父親を捜すうちに、村の男たちの蛮行を知ってしまいます。
幼馴染みの女性2人はソウルで働き、近代化したソウルと村の格差、道徳観の退廃、外国の女性と婚姻する韓国男性のことまで、シングルマザーや知的障害者への差別に加え、韓国社会の問題を描いています。脚本が稚拙なのが残念ですが、韓国の若い監督(Kim Sunahさん、Park Se-huiさん)のチャレンジがまぶしかったです。
「The Dearest」>>

※ ※ ※

ところで、日本もそうだと思いますが、韓国も、養子を迎えるのはハードルが高いそうです。
写真作家チョ・セヒョンさんが呼びかけて、韓国の俳優、K-POP歌手やアイドルが養子縁組への理解を深めてもらうおうと、養子縁組を待つ赤ちゃんと一緒に撮った写真の写真展「天使の手紙」(천사들의 편지)が、ソウルで毎年開催されています。
チョ・セヒョンさんは、「毎年写真展を開きながら、乳児一時保護所には空のベッドだけがあることを、これ以上このような展示会が開かれないことを願った。しかし今年もやはり多くの関心と愛が必要だということを感じた。写真展を通じて、家庭が必要な子供たちをもう一度考える機会になったら良いし、同時に1人でも多くの子供たちが良い家庭を見つけて愛の中で成長することができるように願う」として、写真展の趣旨を語っています。
有名人の写真だけでなく、未婚の母や養子縁組家族の写真も含まれ、韓国社会の未婚の母と養子縁組に対する偏見を変える一助になることを、チョ・セヒョンさん、そしてボランティアで参加したスターたちは願っているそうです。

展示会場ではスターと赤ちゃんの写真が収録されたパンフレットとダイアリーを購入でき、集まった義援金は、養子縁組を待つ子供たちの治療費や手術費、韓国内での養子縁組活性化のために使われるそうです。
この写真展がきっかけで、養子縁組を肯定的に考える人も増えてきたとか。

「天使の手紙 9th-まなざし」展の写真 韓流ファンの方のブログ>> 


ユングさんがベルギーに渡った時代(1960年代)と今は違うけれど、20万人もの子どもが韓国から欧米へ渡ったのには、社会の養子縁組への受け入れ度の違いもあったのでしょうね。

そして、当時の韓国での社会的混乱を生んだ要因の一つが、30年以上続いた日本による植民地占領と世界戦争であったことを思うと、とても”隣の国”の話とは思えません・・・


コメント

コメントフォーム
記事の評価
  • リセット
  • リセット