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第23回Cartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)
2012年9月11日~14日、フランス・ツールーズ市で開催

南仏風もてなしとクリエイティブなプロジェクトがあいまった大成功

第23回Cartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)が、南西フランスで最も美しい街と言われる、ツールーズ市で開催された。250名のバイヤーを含む、800名以上という、これまでで最多の参加者を集め、ヨーロッパのアニメーションの多様性と力強いクリエイティビティを示す、69の新プロジェクトが3日間にピッチされ、引き続きその特色を存分に発揮するフォーラムとなった。

ツールーズの青い空とバラ色の美しい建物が、テレビアニメーションのEU内共同製作のフォーラムである、Cartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)の参加者を歓迎した。市庁舎の素晴らしいSalle des Illustresホールでのウェルカム・カクテル後、市中心部を散策しながらガロンヌ川沿いの歓迎夕食会の会場に向かい、流行の壁面アクロバット・ショーでイベントの幕は開けた。Cartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)の特色とは、ヨーロッパのテレビアニメーションを振興し、共同製作とビジネスを発展させる、理想的な環境を作ることにある。

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ツールーズで開催された、今回のCartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)には、記録を更新する800名以上の参加者が33ヵ国から集った。ヨーロッパ15ヵ国から、延べ422時間、総制作費2億3,000万ユーロという、世界規模のインベストメントの対象となるプロジェクト、69本が提案された。そのうち39%は、4歳~12歳を対象とするこども向けであったが、16%を占めるヤングアダルト・おとな向けプロジェクトは昨年より10%増加した。これらの数字は、アニメーション業界(セクター)の前向きな見通しと、ヨーロッパ内外の放送局の番組編成にヨーロッパ製アニメーションが手堅く入り続けていることを示している。

■ヨーロッパ・アニメーションの新しいトレンド
初日、9月12日のワーキングデーの午前は、ツールーズの日本庭園を臨む、Pierre Baudis Congressの近代的なコンベンションセンターで、トレーラーを試写する「Croissant Show」で始まった。その後は、ブルー、ピンク、パープルと色に因んで名付けられた3部屋に分かれ、ヨーロッパのアニメーションシリーズの新しい企画のピッチが3日間おこなわれた。

Cartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)は創設以来、ヨーロッパ・アニメーションのプロジェクトを実現する場として知られてきた。今年のラインアップを概観すると、50%以上が2Dのプロジェクトであり、22%はヨーロッパの2ヵ国以上間の共同製作であった。キャラクター指向のコメディ、教育番組、アクション&アドベンチャー・シリーズ、童話、ドキュメンタリー、スリラーと、実に多様なジャンルのシリーズが提案された。

今年はまた、360度のアプローチができるアニメーションへの関心が高まっていることが明らかになった。テレビ向けアニメーションに留まらず、他のスクリーン(劇場公開)やディジタルデバイス向けのコンテンツを制作するプロデューサーが増えている。

ヨーロッパ全域に新しいスタジオを急増しており、その多くがツールーズで自らのプロジェクトをピッチしたが、このような急増からアニメーション業界(セクター)の前向きな見通しと、ヨーロッパ・アニメーションの重要な資産の一つである、タレント(優秀な人材)が無尽であることが分かる。

■“メードイン・フランス”のアニメーション
最も興味関心を集めたプロジェクトのランキングを見ると、フランスのアニメーションの成功が分かる。同国は汎ヨーロッパの代表なのだ。TeamTOが製作するコメディ『Oh Brave Knight (and I!)』はピッチ参加者が最多だった。続いて、ツールーズ所在のスタジオ、TAT productionsが製作する『The Jungle Bunch – To The Rescue』、パリのSamka Productionsの『Jamie's got Tentacles』が関心を集めた。フランスのMinuit Productionsの『Steve』とNormaal Animationの『Hello World!』も人気トップ5に入った。

フランスに次いで、ピッチで人気を集めたのは、アイスランドのGunHilが提案した、おとな向けパロディ・コメディの『Space Stallions』、そしてイタリアのStudio Campedelliの『Atchoo!』だった。

ツールーズ市とミディ=ピレネー地域(Midi-Pyrénées)を代表する4つのスタジオ、TAT productions、Xbo Films、Double Metre Animation、そしてLe loKal Productionがプロジェクトを発表し、今回のCartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)で同市と同地域のアニメーションに対する熱意が伝わった。

フォーラムに伴い、9月2日から9月26日まで「Cartoon Festival(カートゥーン・フェスティバル」が開催され、ツールーズ市とミディ=ピレネー地域の25市町で、こども向けワークショップとショートアニメーション上映が催され、一般市民にアニメーションの世界が広がった。Place du Capitole広場の屋外上映には4日間に2,500名以上が集まった。

今回のハイライトの一つは、9月14日(金)にツールーズのABCシネマでおこなわれた、『Kirikou 3 ("Kirikou et les hommes et les femmes")』のフランスのプレミア試写会で、ミシェル・オスロ監督も出席した。

■印象的な文化遺産の数々
9月12日(水)、Cartoon Forum(カートゥーン・フォーラム)恒例の観光をおこなった。ツールーズの北東に位置する、世界文化遺産のアルビの司教都市(Cite episcopale d'Albi:フランス・タルヌ県のアルビに残るレンガ造りの都市建造物群、大聖堂、ベルビ宮殿およびタルヌ川にかかる橋)を訪問した。バラ色のレンガ造りの質素な外観と華麗な内部装飾で知られる、壮麗なサント=セシル大聖堂(La cathedrale Sainte-Cecile)、そして世界最大のアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック絵画コレクションが収蔵されているロートレック記念美術館(アルビ博物館、Le musee d'Albi)がある、ベルビ宮殿(Le Palais de la Berbie)が印象的であった。美術館の中庭では、タマネギのパイ、ニンジンケーキ、チーズ、ソーセージ、リンゴジュース、ワイン、グレープフルーツのリキュールなどの名物料理が振る舞われた。

■活気を保つ、Cartoon Gributes(カートゥーン・トリビューツ)
前年のヨーロッパのアニメーション産業に多大な影響を及ぼした制作会社を年に一度顕彰するCartoon Gributes(カートゥーン・トリビューツ)は、2年連続でアイルランドの企業に贈られた。受賞したのはダブリンにあるJam MediaMonster Entertainmentの2社で、それぞれ昨年最も優れたプロデューサーおよびインヴェスターとして、その功績が認められた。
アイルランドのアニメーション制作会社>>

年間最優秀放送局賞(Broadcaster of the Year)は、フランスのDTT(地デジ)局の中でこどもとその両親をターゲットに放送をおこなう局として、フランスのLagardere Group(ラガルデール・グループ)のGulliに贈られた。

フォーラム最終日に、Pierre Cohenツールーズ市長が地元のTAT productionsに、ミディ=ピレネー地域に活力をもたらした労を讃えて、Cartoon Tribute Toulouse Métropole特別賞を贈呈した。TAT productionsは、『Spike』や『The Jungle Bunch』のシリーズを製作している。

※ このレポートはCARTOONの公式サイトに掲載されたCartoon Forum 2012 Reportの和訳で、その文責はオフィスHにあります。
Cartoon Forum 2012 Report(英語)>>