オフィスH  誠信の交わり

オフィスH(オフィスアッシュ)のブログです。世界から、豊かな物語を紡ぐ個性的なアニメーション映画や独立系作家に役立つ情報を紹介します。

第2回EUアニメーション・デー、2015年10月28日開催
セミナー「欧州の若手クリエイターのオリジナル企画製作の最新事情 
~  デンマークのThe Animation Workshopの事例より」
特別ゲスト MotionGallery代表 大高健志氏

CG Student Award 2015で世界5位/ヨーロッパ1位の教育機関に認められた、デンマークのアニメーション・ワークショップ(The Animation Workshop、以下 TAW)が、10月28日(水)に東京・駐日欧州連合代表部で開催される「第2回EUアニメーション・デー」でプレゼンテーションとパネルディスカッションを行います。

TAWは25年以上の歴史を有す、アニメーションとグラフィックストーリーテリング(コミックス)の人材育成と文化・産業振興のための複合的な公的組織です。
今回は、TAWとインキュベーションセンターArsenalet(アーセナレット)の代表団5名が来日いたします。
  • ジェネラル・ディレクター、モートン・トーニン氏
  • アーティスト・イン・レジデンス「Open Workshop」およびプロフェッショナル・トレーニング部門長、ティム・ルボーニュ氏(欧州のアニメーション支援などに精通しています)
  • グラフィックストーリーテリング学科長、ピーター・デュリング・オルセン氏
  • 国際プロジェクト・イベント担当プロジェクトマネージャー、マーゴ・ジーレ氏
  • アニメーション、ゲーム、アプリ等の文化産業クラスター、スタートアップのインキュベーションセンター「Arsenalet(アーセナレット)」の事業開発担当、アドニス・マイゴート・フロッキウ氏(ゲームエキスパートで北欧のゲーム界に精通しています)
セミナーでは特別ゲストに、2011年の設立以来の取扱いプロジェクト約900、累計調達額約4億5,000万円、日本最大級のクラウドファンディング・プラットフォーム、MotionGalleryの代表、大高健志氏をお迎えして、「日本発クラウドファンディング「MotionGallery (モーションギャラリー)」の最新動向 ~クラウドファンディングが世界への足掛かりとなった、日本の映画・映像~」と題したプレゼンテーションとTAWメンバーとのディスカッションをしていただきます。

セミナー開演前、15:30からTAWの作品ベスト集の上映を予定しています。
日本人として初めて、2013年から14年にかけてアーティスト・イン・レジデンス「Open Workshop」に参加した、松井幸子氏の秀作も上映いたします

TAW一同、日本のアニメーションおよびマンガ(グラフィックストーリーテリング)の業界の方々、若手クリエイターの皆様との交流を深め、今後クリエイティブな国際交流やプロジェクトを発展させられるよう願っております。

SEA Concept Development Lab 2016-2017 日本パートナー、オフィスH


※ ※ ※ 第2回EUアニメーション・デー開催 ※ ※ ※
駐日欧州連合代表部よりお知らせ

■ 第1部(16:00 ~18:00)セミナー
欧州の若手クリエイターのオリジナル企画製作の最新事情 ~  デンマークのThe Animation Workshopの事例より
主催:駐日欧州連合代表部
共催:The Animation Workshop 、Motion Gallery(モーションギャラリー)、オフィスH
後援:デンマーク王国大使館
第1回EUアニメーション・デーで紹介したグローバル市場向けエンターテインメント・コンテンツのコンセプト開発マスタークラス「SEA 2014」(EUのMEDIA MUNDUS助成プロジェクト)のホスト機関を務めたデンマークのThe Animation Workshop(以下、TAW)の代表団が来日、欧州のクリエイティブ産業の最新事情(若手クリエイターに開かれているさまざまな機会、資金調達方法、これまでの成功事例)そして日本人の欧州への足掛かりについてプレゼンおよびディスカッションを行います。

国際的な活躍を視野に入れるクリエイターのみならず、将来のキャリア展望について考える学生、そしてヨーロッパのクリエイティブ産業に関心あるすべての人に興味深い内容になるでしょう。
参加者(以下敬称略): モーテン・トーニング(TAWセンターディレクター)、ティム・ルボルニュ(TAWプロフェッショナル・トレーニングおよび「Open Workshop」部門長)、アドニス・フロキウ(「Arsenalet」事業開発部門責任者)
特別ゲスト: 大高健志(株式会社MotionGallery代表取締役)、進行:伊藤裕美(オフィスH)
■ 交流会(18:00 ~ 19:00) 
第1部、第2部の登壇者と参加者が気軽に意見交換できるネットワーキングレセプションです(飲み物、軽食をご用意します) 。第1部、第2部のいずれかを聴講される方であれば、ご自由に参加いただけます。

■ 第2部(19:00 ~ 21:00)
EU短編アニメ作品上映会 ~アルス・エレクトロニカ2014入作選より
主催:駐日EU代表部、駐日オーストリア大使館
第2部のゲストトーク&上映会のテーマは、オーストリアのリンツで毎年開かれる世界的なメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)」 。
まずは2015年の「アルス・エレクトロニカ賞」のデジタルミュージック&サウンドアート部門でゴールデン・ニカ(大賞)を受賞された赤松音呂氏によるゲストトーク(アルス・エレクトロニカおよびご自身の作品や活動の紹介)、続いてアルス・エレクトロニカ賞2014年の入選作品から、複数のEU加盟国と日本の短編アニメーション作品を紹介します。
(BD上映、制作・提供はアルス・エレクトロニカ。 ※ほとんどの作品は音楽や効果音のみでせりふはありませんが、一部のものには英語によるナレーションが付いています)。
  • 日時:2015年10月28日(水)
    • 第1部16時~18時 ※開場15:00。開演前(15:30~16:00)TAWの作品ベスト集の上映あり
    • 交流会18時~19時
    • 第2部19時~21時
  • 場所:駐日EU表部(東京都港区南麻布4-6-28ヨーロッパハウス)   
  • 言語:日本語、英語(同時通訳あり)
  • お申し込み:入場無料/定員150名。参加を希望されるセッション(A:第1部、B:交流会、C:第2部。複数参加歓迎)をご記入の上、お名前(ふりがな)、ご所属、連絡先メールアドレスをメール[件名:EUアニメ・デー]でDelegation-Japan-Event@eeas.europa.euまでお送り下さい。
  • 10月23日(金)締め切り。(残席あれば、登録させていただきます)
お問い合わせ: 03-5422-6001(代) 駐日欧州連合代表部 広報部まで

第2回EUアニメーション・デーのご案内>>


※ ※ ※ アニメーション・ワークショップ(The Animation Workshop、略称TAW)について ※ ※ ※

デンマークのユラン半島北部ヴィボール(Viborg)にある、25年以上の歴史を有す、アニメーションとグラフィックストーリーテリング(コミックス)の人材育成と文化・産業振興のための複合的な公的組織です。
  • デンマーク最大規模の総合大学VIA University Collegeの傘下で、バチェラー課程のCharacter Animation(キャラクターアニメーション)、Computer Graphic Arts(コンピュータグラフィックアーツ)、そして2013年に開設されたGraphic Storytelling(グラフィックストーリーテリング)の3学科を有する高等教育機関。アート性とビジネス両面の成長を促す実践的な人材育成に定評があり、CG Student Award 2015で世界5位/ヨーロッパ1位の教育機関に認められました。
  • プロフェッショナル・トレーニング: 1988年に若年失業対策として設立されたTAWの根幹をなす活動です。学科修了者や地元実務者のキャリアアップのために、さまざまな再教育コースや国内・国際カンフェランスなどを開催しています。
  • SEA Concept Development Lab 2016-2017(SEAコンセプト開発ラボ 2016-2017): 南米-欧州-アジア/日本3地域のコンセプトアーティストらによるコンセプト開発キャンプで、2014年に第1回を成功裡に実施し、16年と17年に各3週間のキャンプを計画中です。第1回で開発されたコンセプトからTVシリーズ開発中のプロジェクト『Bubblebit & Miau』が出ており、日本人のアートディレクター、宮崎あぐり氏が制作に参加しています。 http://seamasterclass.com/ja/
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SEA 2014(第1回SEAコンセプト開発マスタークラス)で創作された、子ども向けアクション・コメディー・アニメーションTVシリーズのコンセプト「Bubblebbit & Miau」。
日本の宮崎あぐり氏、ブラジルのPaolo Conti氏、チェコのDavid Tousék氏、デンマークのNiels Dolmer-Andersen氏が開発し、現在、EU Creative Europe/MEDIAとデンマークの助成を受け、ポーランドのGS Animation、チェコの3BOHEMIANSを中心に プリプロダクションを行なっている。
フランスで開催されたCartoon Forum(9 月)とMIPCOM(10月)に出品。
  • Animation Sans Frontières: EUの4校(ドイツFilmakademie Baden-Württemberg、ハンガリーMOME - Moholy-Nagy University of Art and Design、フランスGOBELINS, l’école de l’image、そしてTAW)で行う、国境を超えたアニメーション開発ラボ。参加は4校に限定せず、EU全域の若手クリエイターが各校で各2週間のキャンプを行ない、一年間でアニメーションを制作します。 
  • 独立系アニメーション作家のアーティスト・イン・レジデンス、Open Workshop(オープン・ワークショップ)。 http://www.animwork.dk/en/open_workshop.asp
  • ビジネス・デベロップメント: ビジネスハブ、インキュベーションのためのクラスター組織、Arsenalet(アーセナレット)と連携し、事業開発支援、スタートアップ企業と業界との橋渡し、資金調達の指南、イノベーション研究に寄与しています。 修了者の中には、国内やEUのコンテンツ界で就業するだけでなく、Arsenaletで起業する者もいます。就学中に開発したコンセプトを商業化させようと、インターンシップで関係を築いた制作会社へ提案したり、CARTOON(欧州アニメーション協会)が主催するプロジェクトピッチで国際共同製作のパートナーを探すなど活発な活動をしています。クラウドファンディングのKickstarterで開発資金の調達に成功するスタジオも出てきています。
  • アニメーション教授法センター(CAP): 公教育期の子ども向けの“視覚的な言語による自己表現”を指導する教授法の研究開発と指導者向け教授法トレーニングなどの実施。
TAWは多様な活動を通じ、世界中のアーティスト、専門家、企業、資金提供機関・公的機関、教育機関とネットワークを築いています。 
詳しくは公式サイトをご覧ください>>
 
※ ※ ※ KYOTO CMEX2012連携セミナー ※ ※ ※
コンテンツ産業と地域活性 – デンマークのアニメ人材育成現場より レポート

 京都国際マンガミュージアムで、2012年10月28日に「コンテンツ産業と地域活性 – デンマークのアニメ人材育成現場より」が開催された。デンマークは知られていないが、アニメーションやニューメディアの制作が成長著しい。EUの長編アニメーション映画で、フランス、ドイツ、スペインに続く第4位につき、2008年には17本を制作した。  毎年EU圏のアニメーション業界関係者が集まり、新プロジェクトの国際共同製作や配給のピッチをするCartoon Movieで、今年選択された55企画のうち9作にデンマークが企画段階から主導するか、共同製作スキームに加わる。現在デンマークには、A.Film、Egmont、Lego、International Television Entertainment、10 Interactive、Copenhagen Bombayなど20ほどのアニメーションスタジオがあり、400名以上が携わる。デンマークの特徴は国際共同製作が多いことだ。相手国はドイツ、スカンジナビア諸国に加え、アイルランド、フランスに広がり、ヨーロッパのヒット作や話題作にも参加している。
 今回のセミナーは、日本で始めてマンガ学部を創設した京都精華大学が運営する京都国際マンガミュージアムと、若手マンガ家を育てる「京都版トキワ荘」事業を今年度から始めるなど、コンテンツ産業の振興を図る京都市が主催し、デンマークのアニメーション産業界に優秀な人材を送り出す、アニメーション・ワークショップ(The Animation Workshop、以下 TAW)の代表モーテン・トーニング(Morten Thorning)氏を招いて行われた。

 TAWは、国際映画祭で高く評価され、注目が集まる教育機関だ。しかし学校だけがTAWではない。プロのアニメーターの再教育、若手の起業支援、アニメーションを活用する新しいビジネスのハブ機能、そしてコミュニケーションや教育用のツールとしてのアニメーションの可能性を広げるなど、アニメーションに関するセンターとしてデンマーク内で先導的役割を担っている。

■ クリエイティビティは、最重要な資源の一つになる
 TAWを創立から率いるトーニング氏は講演と、アニメーション監督で京都精華大学マンガ学部教授の前田庸生氏とおこなったパネルディスカッションで、「クリエイティビティは、最重要な資源の一つ」と強調した。デンマークも日本同様、天然資源は豊かでない。しかも、人口、国土面積は日本よりはるかに小さい。しかしIT、生命科学、環境科学といった知識集約型産業の世界的な企業が「人材と技術の宝庫」と評価し、研究開発機関を置く(クーリエ・ジャポン、12年7月号)。デンマークは、“人材”という資源を伸ばす産業を促進し、教育を徹底するという選択をしたのだ。
 トーニング氏は、クリエイティビティを担う人、つまりアニメーターに必要な10の素質を挙げ、TAWの教育方針を紹介した:
  • クリエイティブな性格
  • 仕事熱心
  • 自主性のある性格
  • 芸術家としての優れた技量
  • あくせくしない社会や物理的環境を好むこと
  • 多彩な才能(アニメーションはさまざまな分野と関わりがあるため)
  • ドリーイングが基本的な言語であること
  • チームワーカー(制作現場のチームワークを乱さないこと)
  • 学ぶことに興味を持ち、情熱を持てること(アニメーションは常に変化し、勉強は生涯続くため)
  • 常に世界を観察していること
そして、もう一つ大事なのは「金を一番重要と考えないこと」と付け加えた。

■ 業界就職率80%、アートとビジネスの両面の成長を促すアニメーター育成
 TAWは1988年に、若年失業対策としてデンマーク政府の支援を受けて設立された。トーニング氏らの草根の発案に公的予算がつくというボトムアップはデンマークでも珍しいというが、TAWは90年代にデンマークのアニメーション界に貢献する教育を大きく発展させた。デンマークには、1946年にアラン・ヨンセンが長編アニメーション「The Magic Tinderbox」を監督するなど、制作の土壌がまるでなかったわけではないが、永らく産業として発展しなかった。人口550万人の国内市場は狭いものの、90年代にとドイツやノルディック諸国との国際共同製作が牽引し、長編アニメーションが復活した。
 TAWは1993年に、ヨーロッパに新たな制作拠点を置いたウォルト・ディズニー、ワーナー・ブラザーズ、そしてドリームワークスの前身となったAmblimationの3社と提携し、第一線のアニメーターを講師に招き、商業アニメーション技術の指導を始めた。さらに、「ロジャー・ラビット」のアニメーション監督、リチャード・ウィリアム氏を講師に4回のマスタークラスを実施し、聴講生として世界中から400名を超すアニメーターや専門家を集めた。このマスタークラスの成果を、ウィリアム氏は2002年に「The Animator’s Survival Kit(アニメーターズ・サバイバルキット)」として発刊した。この経験は、TAWにアートとビジネスのバランス良い資質を持つクリエイターの育成という方向を定めさせた。
 TAWは2007年に、デンマーク8都市にキャンパスを持つ、最大規模の総合大学VIA University Collegeの傘下に入った。現在一学年50名、延べ200名がバチェラーコース(学部レベル)で学ぶ。コペンハーゲンには作家・監督養成をおこなうデンマーク国立映画学校(Den Danske Filmskole)があるが、TAWは「CGアーティスト」と「キャラクターアニメーション」の2学科で実務教育を重視する。来年9月には「グラフィックス・ストーリーテリング」学科を新設する。TAWには常勤教授はおらず、第一線で活躍するプロを世界中から講師として招く。それぞれの講師は、数週間の講義を受け持つ。カリキュラムと講師は毎年見直される。在学中、学生は複数の習作実習と卒業制作、そして3ヶ月のインターンを行う。インターンは国内に限らず、6割は国外へ出る。第一線で活躍する講師が実践的な指導をし、実際のスタジオ制作に近い環境でトライアンドエラーを行う学生は、チームワークで技量を高め、人格的にも成長する。
 バチェラーコース学生の平均年齢は約22歳。高校卒業後直ぐに入学する者もいれば、就業や別の勉強をしたり、旅行で見聞を広げてから受験する者もいる。入学倍率は約6倍。基本的な描画力と、アニメーションを職業とすることに対する情熱を持つ者をポートフォリオと面接で選別する。卒業生の8割はコンテンツ業界で職を見つけ、そのうち95%はインターンのスタジオに採用される。インターンが学生と業界とを結びつけ、欧米の制作拠点に卒業生が広がる。インターン先の企業から講師を招き、制作現場のニーズに適う人材育成が機能する。就職しない2割も制作プロジェクトに携わり、業界での成功を目指す。

■ 人材育成で、地元のユトランド半島、デンマークそしてEU圏のコンテンツ業界に貢献
 EU圏のアニメーションやゲームなどのコンテンツ産業は年率6%で成長している。やや古い記録だが、2006年時点で約29万3000社が490万人を雇用し、売上総利益で7億9,230万ユーロ(約745億円)に達した。TAW卒業生の4割がEU圏で職を見つけ、4割以上は首都コペンハーゲンへ向かう。
 約2割は地元のヴィボールあるいはユトランド半島に残る。かつてはコペンハーゲンに流出する一方だったが、近年その流れが変わった。いったん国外へ出ても、家族と共にデンマークや地元に戻る者が増えている。子育てに適した社会環境が評価されてのことだ。ここで重要なのは、国外で培った人的ネットワークを携えてクリエイターたちが戻ることだ。インターネットは、どこにいてもコンテンツ創作を可能にした。これからは、物理的な距離だけでなく、“誰と一緒に仕事ができるか”というネットワークが重要と、トーニング氏。人間的な生活ができる場所で創作ビジネスをする、優れた人(資源)がある所に人が集まるだろう。
 ユトランド半島の中央および北部地域には183万人が住む。2008年時点で、映像やニューメディア関連企業714社が約1億2,000万ユーロ(約124億円)を売り上げる。デンマーク映画協会(Den Vestdanske Filmpulje)は、この地域の映像やニューメディアに2008年から4年間に420万ユーロ(約4億4,000万円)の制作助成をし、149の新規雇用と1,650万ユーロ(約17億円)の追加的利益をもたらした。欧米では、公的資金が制作助成に使われるが、その結果生まれた雇用や利益を厳しく評価する。失業、とりわけ若年失業率の高いヨーロッパでは新たな雇用が必須だ。若者に人気のあるコンテンツ産業は雇用効果もあると見て、積極的な振興を行う。
 古い軍施設を転用した、6,000㎡のTAWキャンパスには、地域のコンテンツ産業に貢献する組織も設置されている。卒業生や実務者のキャリアアップのための「プロフェッショナル・トレーニング」はVFX、3Dキャラクターアニメーション、ドキュメンタリー・アニメーションの再教育、そしてマスタークラスや実業に関するカンフェランスを行う。独立系作家がTAWに滞在して自主制作する「オープン・ワークショップ」はTAWを特色付ける。国籍を問わず、常時40名ほどのアーティストが年間に大小120ほどの制作を行う。
 学生の起業を支援するインキュベーション「ビジネス・デベロップメント」、科学省の予算でアニメーションを用いた新たなビジネスを支援するネットワーク「アニメーション・ハブ」。TAWは、エンタテインメントだけでなく、コミュニケーション手段としてアニメーションを社会や経済の分野で活用するアイデアの商品化、ビジネス化を促す。「ビジネス・デベロップメント」で現在17社、56人が事業を行っている。そして「Arsenalet」(武器庫、宝庫)が、アニメーションのイノベーションのためのクラスターとして設置され、ビジネス指南、業界内外の企業間の仲介、資金調達の指導、イノベーション研究の便宜を図る。

■ 新しいビジュアル・エイジに、日本とのパートナーシップを強めたい
 「わたしたちは、ビジュアル・エイジの黎明期にいる」。トーニング氏はコミュニケーションが文字だけから、ビジュアル(視覚)も重視されるようになり、アニメーターのスキル、つまり絵を描く、そして想像する技量が“視覚的なコミュニケーション”の鍵になるとする。
 そこでTAWは、ツールとしてのアニメーションを教える教授術の向上と伝授を行う、アニメーション教授法センター(CAP)を運営している。デンマークの公教育では、低学年から高校まで、子どもたちが視覚的な言語で自己表現でき、視覚表現・映像表現で自己研さんする指導を始めている。教育現場は経験が少なく、CAPは個々の子どもの可能性を高められる、さまざまな教授法を見出し、広めようとしている。
 トーニング氏は、10月27日に京都コンピュータ学院で行われた、DoGA主催の「CGアニカップ 日x欧x台湾 親善試合」で、日本と台湾の短編CGアニメーションを鑑賞し、日本の作品は詩的な美しさを持ち、質がとても高いと評価した。氏は、一般的に日本の映画、アニメーションの発想は巧みだが、ヨーロッパ人がその含むところを完全に理解するのは難しく、より広い市場を求めるなら、多くの人が理解できるようにすることも大事だとした。日本映画、アニメーションは、ヨーロッパのアカデミックは評価するものの、一般観客が見るに至っていないとも指摘した。
 パネルの前田氏は、国際共同製作のりんたろう監督作品「よなよなペンギン」をタイで制作した時に“めりはり”の意味合いをタイ人のアニメーターに理解させるのに一年を要し、短い単語で表現することに慣れた日本人同士なら通じることが国外では簡単に通用しないこと、日本の監督の強い情感を伝えることの難しさに触れた。これにトーニング氏は、日本のプロデューサーや監督は“めりはり”を、どうしたらヨーロッパ人が理解できるかを考えてほしいとして、デンマークと日本両者の良さを組み合わせることを考えてはどうかと、日本とのパートナーシップに期待を示した。前田氏は日本の制作現場はもっとシステム化しなければならないとした。
 トーニング氏は最後に、ヨーロッパ、ブラジルそして日本の若手のプロデューサーが集まり、コンセプトアニメーターと一緒に創作を行うワークショップ「SEA」を2013年から行うという予定を披露した。国際共同製作が盛んなデンマークで、日本のプロデューサーも文化・言葉が異なる人たちとネットワークを活発に培ってほしいとした。

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